2025年1月10日金曜日

索漠

同胞の中に身を置きながら、自分一人だけが異邦人のように扱われている索漠(さくばく)とした思いが、さらに神経を昂らせた。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年1月7日火曜日

首実検

紀尾井町の宿舎へ壹岐たちを首実検(くびじっけん)に来た時の平凡な法律家という印象とはうってかわり、裁判長をも睥睨するような眼付で、「検察団を代表して、お願い致したいことがあります、この証人は、(中略)」と云った。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年1月6日月曜日

曖昧模糊

やがて、壹岐は食事を終え、曖昧模糊(あいまいもこ)とした思考に疲れ果て、そのまま眠りかけると、扉が開かれた。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年1月5日日曜日

よすが

壹岐は、ジープの左右に眼を配り、ハバロフスクに残されている日本将兵の消息を探ろうとしたが、市街地のせいか、消息を知るよすが(縁)となるものは、何も見当たらない。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年1月4日土曜日

慚愧

その同じ時期に、自分たち司令部の参謀は、飛行機で一路、ハバロフスクに連行され、無為の日を送っていたのかと思うと、慚愧(ざんき)の思いが、胸を貫いた。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年1月2日木曜日

心に染む

見合いの席で会った浜田大将の令嬢は、彫りの深い美貌と明るい性格の女性であったが、言葉のはしばしに大将である父を意識し、暗に壹岐にも将来、大将になることを期待しているような様子が感じ取られ、それが息の心にそま(こころにそま)なかった。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年1月1日水曜日

囂しい

シベリア鉄道の主要駅であるハバロフスク駅らしかったが、線路の間に紙屑が散乱し、人々が勝手に線路に渡り、それを静止する駅員の声がし、無秩序で囂しかっ(かしましかっ)た。

山崎豊子『不毛地帯』