同胞の中に身を置きながら、自分一人だけが異邦人のように扱われている索漠(さくばく)とした思いが、さらに神経を昂らせた。
山崎豊子『不毛地帯』
紀尾井町の宿舎へ壹岐たちを首実検(くびじっけん)に来た時の平凡な法律家という印象とはうってかわり、裁判長をも睥睨するような眼付で、「検察団を代表して、お願い致したいことがあります、この証人は、(中略)」と云った。
山崎豊子『不毛地帯』
見合いの席で会った浜田大将の令嬢は、彫りの深い美貌と明るい性格の女性であったが、言葉のはしばしに大将である父を意識し、暗に壹岐にも将来、大将になることを期待しているような様子が感じ取られ、それが息の心にそま(こころにそま)なかった。
山崎豊子『不毛地帯』