2022年1月30日日曜日

歴と

私は三木さんのご経歴を調べ、ご親戚筋に外務省のエリートだった方もいらしたことも知りました、歴と(れっきと)した方なのに、まるで奥さんのヒモ呼ばわりされ、名誉毀損もいいところです。

山崎豊子『運命の人』

2022年1月29日土曜日

衒い

「私は」そういう切り口でこの事件は見るべきではないと思うんです」衒い(てらい)のない口調で話した。

山崎豊子『運命の人』

2022年1月27日木曜日

饐える

先刻まで、饐えた(すえた)匂いの充満している留置所の房の中で、体を丸め、絶望と孤独に打ちひしがれていたことなど、微塵も感じさせない堂々とした口調で挨拶した。

山崎豊子『運命の人』

2022年1月23日日曜日

手を拱く

君がそこまで感じるのなら、手を拱いて(てをこまねいて)いる場合じゃないな、かくなる上は十時長官に直に会見を求め、もっとはっきりした感触を掴むべきだな。

山崎豊子『運命の人』

2022年1月16日日曜日

懊悩

翌午前五時半起床時刻まで眠れぬ夜に、弓成は懊悩(おうのう)した。

山崎豊子『運命の人』

2022年1月15日土曜日

流言蜚語

検事さんでも、そんな政界雀の流言蜚語(りゅうげんひご)に惑わされるのですか。

山崎豊子『運命の人』

2022年1月10日月曜日

痛飲

昨年十一月末頃、あなたは新宿の小料理屋で横溝議員と痛飲(つういん)されていますよ。

山崎豊子『運命の人』

2022年1月9日日曜日

鱶のように

編集局を横切り、廊下を隔てた向かい側の宿直室を覗くと、二段ベッドが六列、並んだそこここに、泊りの記者たちが鱶のように(ふかのように)眠り込んでいる。

山崎豊子『運命の人』

2022年1月8日土曜日

隔靴掻痒

ニュースソースの関係で、自身が記事にする時さえ、はっきり書けず、隔靴掻痒(かっかそうよう)の思いでいるのですから、お渡しすることは出来ませんね、政治家は政治家なりの方法で、この密約を暴いて下さいよ。

山崎豊子『運命の人』

2022年1月1日土曜日

生き馬の目を抜く

純粋な生き方しか出来ない父に、生き馬の目を抜く新聞の世界で、抜いた抜かれたのスクープ合戦に明け暮れる夫の仕事についての心配を話したところで、心を痛めるだけかもしれない。

山崎豊子『運命の人』