2023年6月30日金曜日

立錐の余地もない

あまりにも大袈裟な言葉に、一瞬、座が白けかけたが、立錐の余地もない(りっすいのよちもない)ほどの場内の騒めきにかき消された。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月29日木曜日

殲滅

副社長、かくなる上は、裁判に持ち込むべきかと思います、金と時間がかかる裁判に持ち込んで、あのアカ組合を徹底的に殲滅(せんめつ)する、これがわれわれ組合の総意です。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月28日水曜日

恨み骨髄に徹す

恨み骨髄に徹する(うらみこつずいにてっする)というように云い、中谷も歯ぎしりした。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月26日月曜日

シンパ

南専務は、命令が出た限りは、従うより他ないという意見です、もともと、心情的に恩地シンパ(しんぱ)なのです、せっかく、アカの親玉黴菌の恩地を、今日まで島流しにしてきたというのに、沢泉という子黴菌が育って、一人前のことをはじめたかと思うと、腸(はらわた)が煮えくり返ります。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月25日日曜日

煮え湯を飲まされる

そうか、君は何度も煮え湯を呑まされ(にえゆをのまされ)て来たからな。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月24日土曜日

言質を取る

午後一時からの木暮社長とのトップ交渉の場で、差別を是正するという言質を取ら(げんちをとら)ない限りは、信用できません。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月23日金曜日

声涙ともにくだる

これも、証人尋問のしんがりを務めた恩地さんの声涙ともにくだる(せいるいともにくだる)証言と、その後、沢泉君が中央執行委員長として、会社の差別政策を止めさせるよう、早期に命令を出してほしいと訴えた結果だよ、よくやった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月22日木曜日

舌の根の乾かぬうちに

全面的に協力するからと、私を委員長に口説き落とした八馬さんがその舌の根も乾かぬうちに(したのねもかわかぬうちに)、団交の席でテーブルを挟み、労務課長としてわれわれと対峙したからです。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月21日水曜日

御殿女中

姑息な役人上がりや御殿女中(ごてんじょちゅう)のいない会社で、仕事のことだけ考えていればいいからね、いつか寄りなさい。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月20日火曜日

高邁

人間性、人格形成、責任意識という高邁(こうまい)な言葉が、繰り返された。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月19日月曜日

総毛だつ

気がつかないうちに、もしや自分も、その魔性に魅入られているのだろうか——、恩地は総毛だち(そうけだち)、身震いした。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月18日日曜日

出奔

恩地はオフィスへ急ぎながら、大使館の医務官夫人が、大使付きの現地運転手と道ならぬ恋におち、子供まで置いて港町のモンバサへ出奔(しゅっぽん)した話を思い出した。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月17日土曜日

多士済々

商社、海運会社の駐在夫妻、獣医、言語学者など、メンバーは多士済々(たしせいせい)で、話題にはこと欠かなかった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月16日金曜日

鷹揚

「はじめまして、私は国民航空のナイロビ営業所に赴任しました恩地元です」と挨拶すると、二メートル近い大柄な社長は、鷹揚(おうよう)に革張りの椅子から立ち上がり、手をさしのべた。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月15日木曜日

引導を渡す

「前にも話したように、君の人事は私の権限外のことだから、理屈を並べても時間の無駄だ、間違っていようが、いまいが、辞令が出てしまえば、従うより他ないね」引導を渡す(いんどうをわたす)ように、云った。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月13日火曜日

機を見るに敏

日本時間の午前七時に直属の上司でもない部長宅へ緊急電話を入れるとは度胸がいいというか、機を見るに敏な(きをみるにびんな)奴だよ。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月12日月曜日

硬骨漢

君の硬骨漢(こうこつかん)ぶりは、承知しているが、相手が悪い、この際、本社も事情があるらしいから、頼むよ。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月11日日曜日

魑魅魍魎

日本では、ロイヤル・ファミリーに対して幻想を持ち過ぎだ、ロイヤル・ファミリーの名のもとに、利権を貪る魑魅魍魎(ちみもうりょう)の集団に過ぎない、そんな実態を知らず、妙な政治判断を下す前に、なぜ、現地支店長たる私に知らせなかったんだ、ここから先は、現地で一切取り仕切るから、本社で勝手な決定をしないで貰いたい。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月10日土曜日

取りつくしまもない

「では、自分でヘッド・オフィスへ確かめてはいかがですか、用件は以上です」ブサリーは話を打ち切り、あとは取りつくしまもなかっ(とりつくしまもなかっ)た。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月9日金曜日

口八丁手八丁

委員長はお祭り男で有名な畑辰造、副委員長は策士の甘粕一夫、書記長に至っては、口八丁手八丁(くちはっちょうてはっちょう)で、黒を白と云いくるめるペテン師の美原譲治、この三人を見れば、会社に舁がれた臆面もない御用組合であることは明らかだ。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月8日木曜日

衷心

今日はようこそ、この歴史的な大会にお集り下さいました、特に、大阪をはじめ福岡、札幌から、この日のために馳せ参じて下さった代表者には、衷心(ちゅうしん)より感謝します。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月6日火曜日

言質

曽て、組合との団交の席でも、労務担当役員の胴元は、爬虫類のような動きのない表情で、言質(げんち)を取られぬよう最小限の発言しかしなかった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月5日月曜日

息せききる

「恩地さん、ここでしたか」息せききっ(息せききっ)て、客室担当者が走り寄って来た。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月4日日曜日

荒む

イランの荒々しい気象条件と人間に囲まれ、いつの間にか、妙に苛だち、荒み(すさみ)つつある自分に気付いた。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月3日土曜日

面罵

「それがペルシア商法というのなら、汚すぎる、これが普通なら、以後、あんたとのつき合いは不快だから止める!」と面罵(めんば)し、フラットを出て、車に戻ったが、なかなか、エンジンは、かからない。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月2日金曜日

貪婪

仕事の上で、これほど熱心だったことはなく、リーダーシップもなかった支店長が、こと土産物の類いの話になると、人が変わったように貪婪(どんらん)になる一面を見せた。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年6月1日木曜日

喜捨

墓守は、ウルドゥ語らしき言葉で、案内を買って出るふうであったが、恩地は断り、心ばかりの喜捨(きしゃ)をすると、恭しく頭を下げ、子供の手を引いて、たち去って行った。

山崎豊子『沈まぬ太陽