2021年9月30日木曜日

洒脱

久子の洒脱(しゃだつ)なたとえで、ようやく溜息の色が見えた。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月29日水曜日

たまさか

 それは比類なきヒーローである元帥が、たまさか人間に戻る一瞬であった。

浅田次郎『日輪の遺産』

2021年9月27日月曜日

奸物

あの奸物(かんぶつ)を怖れるのではない。

浅田次郎『日輪の遺産』

2021年9月26日日曜日

花嫁御寮

まるでさわが結婚式を上げる花嫁御寮のような動揺のしかただった。

新田次郎『孤高の人』

2021年9月25日土曜日

いまわのきわ

 老人がいまわのきわに投げ出した手帳である。

浅田次郎『日輪の遺産』

2021年9月23日木曜日

掉尾

 一年の掉尾(ちょうび、角川文庫単行本による振り仮名はとうび) を飾る有馬記念競争(グランプリ・レース)は中山競馬場で行われる。

浅田次郎『日輪の遺産』

2021年9月20日月曜日

無音

二年間の無音(ぶいん)などまるで意に介さず、安藤は微笑で片岡を迎え、思いもよらぬ凶報にも心を動(ゆる)がさなかった。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月18日土曜日

瞠目

  事務所に入るなり、誰もがまず紙包みの厚さに瞠目(どうもく)した。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月8日水曜日

天保銭

 勘弁してくれ、あの参謀殿はそんじょそこいらの天保銭(てんぽうせん)とはわけが違う。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月6日月曜日

斟酌

 あの郵便局長の言葉を、なぜ深く斟酌(しんしゃく)しなかったのだろうか。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月3日金曜日

居丈高

本堂の板敷にあぐらをかき、浅井マキ子が対(むか)いにかしこまるのを待って、首席訓導は居丈高(いたけだか)に言った。
浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月1日水曜日

ためつすがめつ

 マッカーサーは絨毯の紋様や壁のレリーフや、照明器具の細工やステンドグラスにまで巧みに図案化された不死鳥の意匠を、ためつすがめつ見つめていた。

-- 浅田次郎『日輪の遺産』