2026年9月29日火曜日

感興

彼女にとって、私の存在したかつての人生と、私の存在しない今の人生とのあいだにはどれほどの違いがあるのだろう? そして彼女はその違いについてどんな感興(かんきょう)を抱いているのだろう? 私は考えるともなく、そういうことを考えていた。

村上春樹『騎士団長殺し』

2026年9月22日火曜日

しじま

私は人差し指を唇にあてた。免色はすぐに黙った。そして我々は夜の静寂(しじま)の中に耳を澄ませた。

村上春樹『騎士団長殺し』

2026年9月21日月曜日

禍々しい

満月に近い月の白く艶やかな光に照らされた祠は、それなりに意味深く、いくらか禍々し(まがまがし)くさえ見えたのだが、今ではただの色褪せた貧相な木箱にしか見えなかった。

村上春樹『騎士団長殺し』

2026年9月20日日曜日

得心がいく

いいですよ。得心がいく(とくしんがいく)まで考えてみてください。とくに差し迫った話ではないと先方は言っています。

村上春樹『騎士団長殺し』

2026年9月12日土曜日

帳尻を合わせる

東京に戻ってきて、長いあいだ独身生活を送っていたが、絵を描くだけで十分生活できるようになってから、突然思いついたように郷里の遠縁の女性と結婚した。まるで人生の帳尻を合わせる(ちょうじりをあわせる)みたいにさ。

村上春樹『騎士団長殺し』

2026年8月20日木曜日

まがうかたなく

強奪者であるにせよないにせよ、DNAは今日まがうかたなく(紛う方なく)生存機械を握っている。

リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』

2026年8月19日水曜日

がなりたてる

彼はトビケラを飼って繁殖させることができればと考えているのだが、それを試みようにも、彼らを交尾させることができないと語った。これに対して、最前列にいた昆虫学の教授が、まるでいちばん自明な事柄を見過ごしているといわんばかりに、大声で。がなりたてたのだ。

リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』