2023年5月31日水曜日

栄耀栄華

栄耀栄華(えいようえいが)と滅亡の歴史の中で死んでいった人々の墓は崩れて、石杭のように僅かに残り、霊廟も柱だけが俤をとどめて累々と続き、やがて大地に埋もれている。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月30日火曜日

腹に据えかねる

この国ではよくあることとはいえ、あまりのひどさに、恩地は、腹に据えかね(はらにすえかね)た。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月29日月曜日

早晩

今、恩地を支えている執行部は、あれに引きずり廻され、早晩(そうばん)、死屍累々だ、君はどうするつもりだ。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月28日日曜日

気色ばむ

恩地が、行天を見据えて云うと、「親しき仲にも礼儀ありだ、言葉を慎んで貰いたい」むっと、気色ばん(きしょくばん)だ。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月27日土曜日

誹りを免れない

私たちの今の要求は、これまでが低賃金であったため、正当なものであるが、一気に、一律定額四千円プラス、基本給二〇パーセントのアップ、諸手当の最大割増率二〇パーセントの要求は、世間から見れば非常識の誹りを免れない(そしりをまぬがれない)と思う。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月25日木曜日

毒を以って毒を制す

云われるまでもなく、昨年の十二月、日経連専務理事から、労務対策の手ぬるさを指摘され、組合執行部を制するには、毒を以って毒を制す(どくをもってどくをせいす)の術で、転向者の堂本信介の登用を示唆されたのだった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月24日水曜日

下賤

私は、労働組合などという下賤(げせん)な団体に加入しておりません。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月23日火曜日

罷り通る

いやしくも一人の人間の死です。そのような考えは到底、罷り通り(まかりとおり)ません。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月22日月曜日

木で鼻を括る

「労務担当として申し上げたいのは、あくまで現実に即した要求を出し直して戴きたいということです」 「それでは、われわれの要求が非常識だと云われるのですか」 「——言葉通りです」 木で鼻を括る(きではなをくくる)ように、答えた。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月21日日曜日

伍する

いよいよ、海外渡航の自由化と、東京オリンピックを控え、今年あたりから、航空業界の本格的な需要が予想される、こういう時こそ会社と組合は強調し、労使一丸となって、世界各国の航空会社に伍して(ごして)行ける体力作りを、大きな目標にしたいと思っています。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月20日土曜日

披瀝

半ば、侮るように云ったが、恩地は、その転向組ならばこそ、手強い——、転向者なるが故に、労使対決の"踏み絵"を踏み、会社への忠誠心を披瀝(ひれき)しなければならぬ立場におかれるからだった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月16日火曜日

奈辺

アフリカの地の果てとも云われているラゴスの市場調査は、国民航空にとって何ら必要のないことであるにもかかわらず、ものものしく、出張期間を指定してまで、自分を行かせようとする真意は、奈辺(なへん)にあるのだろうか。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月13日土曜日

村夫子

部屋に入って来た桧山社長は、村夫子(そんぷうし)然とした表情をちらっと動かし、「これは一体、なんだね」と聞いた。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月11日木曜日

二枚腰三枚腰

しかし、桧山社長は要注意だよ、根は悪人とも思えないが、相当な二枚腰、三枚腰(にまいごしさんまいごし)だと思う。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月10日水曜日

語り草

その一件は、社内の語り草(かたりぐさ)になっていた。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年5月7日日曜日

濁声

陣頭指揮を執るように、濁声(だみごえ)を上げた。

山崎豊子『沈まぬ太陽