2026年8月4日火曜日

金科玉条

そうです。お屋形さまのご指示は、こういう生きかたを金科玉条(きんかぎょくじょう)にしている人間にとっては、全部逆の指示です。大混乱が起こります。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年8月3日月曜日

不得要領

そのときがそうだった。不得要領(ふとくようりょう)な表情をしている柏木を見ると、須田はムッとした。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月31日金曜日

哄笑

歓声は哄笑(こうしょう)に変わった。治憲が米沢に入国して初めてきく藩士たちの哄笑であった。笑いは心をほぐれさせる。ある種の感動が大広間に生まれていた。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月30日木曜日

人いきれ

城内の大広間は侍たちで溢れた。風がないから人いきれ(ひといきれ)でたちまち暑くなる。暑さは人を不機嫌にする。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月29日水曜日

目に余る

須田は、国もとでの重役たちの動きを、手にとるように知っていた。というより、かれもその一味だった。米沢本国での"火種組"の行動は、重役たちからみれば目に余っ(めにあまっ)た。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月26日日曜日

鳩首

鳩首(きゅうしゅ)して、対策を協議するが、いい知恵は出ない。結論が決まっているからである。すべては金に帰着する。そして、その金がいまの上杉藩にとって、もっともないもののひとつであった。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月25日土曜日

徒食

武士の権威とは何か、侍とは何か。私からみれば、民の年貢で養われる徒食(としょく)の人間にすぎない。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月23日木曜日

ほだされる

ここの宿主が商用で江戸に来て千代を気にいり、何度かかよって、「女房になってくれ」と懇願した。からだの弱そうな誠実な男だった。男の実にほだされ(絆され)て、千代は小野川に来た。ようやく温泉宿の経営をおぼえたころ、亭主が死んだ。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月22日水曜日

眉宇

しかし、治憲は、「この人事で改革を進める」といった。穏やかだが、決して退かない強い決意が眉宇(びう)にあった。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月17日金曜日

富民

一つの火種が十にも二十にもなった。そしてそれぞれがまた新しい炭に移された。炭火は十倍にも二十倍にもなったのである。これが、雪の道に燃えた、新しい富民(ふみん)のための改革の火種であった。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月14日火曜日

短兵急

その古い池を、棒を持ってかきまわしに行こう、と決意したものの、治憲は決して短兵急(たんぺいきゅう)にいきなりその池をかきまわしてはならない、と自分にいいきかせた。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月12日日曜日

拱手

竹俣当綱たちに、改革案を作成させている間、治憲は決して拱手(きょうしゅ)していたわけではない。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月11日土曜日

諄諄

米沢藩の実態をふまえて、こんどの治憲の方針がいかに無謀であるかを諄諄(じゅんじゅん)と説いているのであった。

童門冬二『全一冊 小説 上杉鷹山』

2026年7月8日水曜日

洗いざらい

いいわよ、話したいことあるんなら洗いざらい(あらいざらい)話しちゃいなさいよ。聞いてあげるから。

村上春樹『ノルウェイの森』

2026年7月7日火曜日

睥睨

例によって鴉が屋根の上に止まってあたりを睥睨(へいげい)しているだけだった。

村上春樹『ノルウェイの森』

2026年6月28日日曜日

反吐

店の斜め向かい側の路地では酒を飲みすぎた学生が反吐(へど)を吐いていた。

村上春樹『ノルウェイの森』

2026年6月17日水曜日

科白

もしあなたが自叙伝書くことになったらその時はその科白(せりふ)使えるわよ。

村上春樹『ノルウェイの森』

2026年5月5日火曜日

百年目

然し鼠なら君に睨まれては百年目(ひゃくねんめ)だろう。

夏目漱石『吾輩は猫である』

2026年4月21日火曜日

胡乱

胡乱(うろん)げな眼差しで根本を見据える。

楡周平『限界国家』

2026年4月11日土曜日

呵々

峰岸は、そう言い放つと、愉快そうにだって呵々(かか)と笑い声を上げた。

楡周平『限界国家』

2026年4月10日金曜日

巷間よく

巷間よく(こうかんよく)、今現在は一人の高齢者を二人の現役世代で支えているけど、早晩一人で支える時代になると言われていますが、私はそれすらも甘い見立てだと思っていましてね。

楡周平『限界国家』

2026年4月9日木曜日

同じ穴の狢

それもありますが、厚労省だって同じ穴の狢(おなじあなのむじな)だからですよ。

楡周平『限界国家』

2026年3月28日土曜日

芋洗い状態

七夕っていやあ仙台だけど、あれと似たような飾りが商店街のメインストリートを埋め尽くしてさ。それこそ、立錐の余地もない、芋洗い状態(いもあらいじょうたい)ってやつだったんだ。

楡周平『限界国家』

2026年3月24日火曜日

無事これ名馬

役所は前例主義ですからね。少子化対策なんて、これまでやったことないんですし、無事これ名馬(ぶじこれめいば)ですからね。下手に大胆な策を打ち出したはいいけど、失敗したら出世できなくなっちゃんうんですもん。

楡周平『限界国家』

2026年3月22日日曜日

遅きに失する

私も、七十五歳になりましたのでねえ。生涯現役を貫こうとする方もおられるが、技術、社会、国際情勢、全てのことがすさまじい速さで変化している時代ですのでね。いつまでも、年寄りがトップにいたのでは、ろくなことにならない。遅きに失し(おそきにしっし)た感は否めませんが、この辺が潮時かと思うに至ったわけです。

楡周平『限界国家』

2026年3月16日月曜日

陶然

それらの様子を、さっきから貴船は飽きもせずに眺め、尊いものでもあるかのように陶然(とうぜん)としているのである。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月14日土曜日

静謐

その連絡を受け取ったとき、ざわついていた室内が水を打ったように静まり返った。静謐(せいひつ)の中、佃のやりとりの声だけが響いている。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月13日金曜日

瑕疵

万が一、ウチの体制の瑕疵(かし)を指摘されたとなれば、我々も無傷ではいられない。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月12日木曜日

痛罵

そう決めつけると唇を歪め、「そんな脇の甘いことだから、いまだに開発の目処が立たないんだよ」、と痛罵(つうば)した。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月11日水曜日

平仄

たしかに、それなら日本クラインが佃製作所ではなく、サヤマ製作所にバルブを発注した理由として平仄(ひょうそく)が合う。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月10日火曜日

腹案

「オレにはひとつ、腹案(ふくあん)がある」その佃のひと言に吸い寄せられるように、江原の視線が動いた。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月9日月曜日

病葉

桜田は虚ろな表情になり、こたえなかった。いや、こたえられなかった。努の言葉は、枝を離れた病葉(わくらば)のように桜田の胸の奥底へと舞い落ちていく。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月8日日曜日

ひっつめ

近づいて声をかけると、ルーペ越しに試作品を観察していた立花が、血走った目を向けてきた。髪をひっつめ(引詰)にして作業している加納にも、疲労が滲んでいる。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月7日土曜日

知悉

滝川もまた、付き合いが古いだけに貴船の置かれた状況を知悉(ちしつ)していた。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月5日木曜日

霞を食う

中里はせせら笑った。「結構なことだ。だけどな、お前はかすみ食っ(霞くっ)て生きていけるのか」

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月4日水曜日

軍門に降る

「我々があの人の軍門に降ら(ぐんもんにくだら)ない以上は」一村の言葉をたしかめ、佃は通話を終えた。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月3日火曜日

袖にする

私がわざわざこんないい話を持ってきたのに、君はそれを袖にする(そでにする)というのかね。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年3月1日日曜日

容喙

医者一家に生まれながら、自らは医学に進まず公認会計士となった"はぐれ者"だが、会計知識を武器にして、あれやこれやと大学のやり方に容喙(ようかい)してくる難敵である。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年2月28日土曜日

層倍

次期学長も当確ですね。その節は、層倍(そうばい)のご贔屓をお願いします、先生。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年2月26日木曜日

いけすかない

ちょうどいま、いけすかないって、話してとところさ。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年2月24日火曜日

ご多分にもれず

佃製作所には、小型エンジン関連の営業第一部と、それ以外の営業第二部という二つの営業部があり、ご多分にもれず(ごたぶんにもれず)、双方で張り合うライバル関係にある。

池井戸潤『下町ロケット ガウディ計画』

2026年1月18日日曜日

投宿

友人・知人の家に投宿(とうしゅく)していたのだが、そのなかでいちばん気楽にのんびりさせてもらっていたのが、ロンドンの西方イーリングにある民宿「M&K」。

彬子女王『赤と青のガウン』

2026年1月17日土曜日

垂涎

その彼と二人きりで作品について語ることができるこの時間は、日本美術研究者にとっては垂涎(すいぜん)の贅沢なひとときなのである。

彬子女王『赤と青のガウン』