調査すれば解ることですが、国民航空の社員食堂が、他社と比べて高く、まずいこと、催物、通信販売には、生協幹部への上納金なくしては参加させて貰えないこと、また、その多寡によって、売場の配置やカタログでの扱いが違って来ることなど、目に余る(めにあまる)ものがあります。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
調査すれば解ることですが、国民航空の社員食堂が、他社と比べて高く、まずいこと、催物、通信販売には、生協幹部への上納金なくしては参加させて貰えないこと、また、その多寡によって、売場の配置やカタログでの扱いが違って来ることなど、目に余る(めにあまる)ものがあります。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
衆参同時選挙がこの夏に行われそうなこと、株価がこの三日間でかなり上昇していることなどを読んでから、社会面、特に死亡欄には仔細に目を通した。恩顧を蒙っ(おんこをこうむっ)た人への弔意を、国見は重んじる性格だった。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
爪に火を点す(つめにひをともす)ように苦労して新しい機械を入れ、アメリカより後発だった合繊は特に、よりよい設備投資と絶えざる技術革新という、血と汗の結晶だったのである。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
そこで率直にお聞きしますが、『会長室』について、揣摩臆測(しまおくそく)がとび、国民航空のシャドウ・キャビネットなどという声も耳に入って参りますが、会長室とはどのような部署なのですか、お伺いします。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
皆さんの中には、これまでの経緯で、相容れぬ相手もあるでしょうが、航空史上最大の惨事を引き起こしたことを肝に銘じ、過去にこだわらず、云うならば私怨(しえん)を超え、心を一にして、絶対安全という共通の目標を持って、現在の難局を乗り切って貰いたい、何か問題があれば直接、私にぶつけて、一緒に問題を解決して行きたい。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
岩合は、八の字眉の下の三白眼(さんぱくがん)を、轟にちらっと向け、「確かに国見は手がやけそうな人物だ、だが、もし、われわれに一言の挨拶もなく、新生労組に手を出せばどうなるか、早目に知らしめておくべきだ」と云い、「どうだ、秋月、酔いざましにちょっと、甲板へ出るか」秋月に、目配せした。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
一方、権田の方も、国見会長と何度か話し合い、その内容は逐一、報告させていますが、えらい惚れ込みようで、組合統合以外、道はありませんと、ミイラ取りがミイラになっ(みいらとりがみいらにな)たようなことを云いはじめる始末です、頭を冷せと怒鳴りつけてやったところですよ。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
「厄介な奴が、国民航空へ乗り込んで来たものですね、恐いもの知らずほど、手がやけるものはない」だらしのない巨体とその風貌に似合わず、ピンクのシャンパンが大好物の轟が、冷えたシャンパンを飲みながら、嘯い(うそぶい)た。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
「先生、いろいろとご高見(こうけん)を伺わせて戴き恐縮でございました」と云い、海野社長も、いつもの頭の高さと打って変わって、「今後ともよろしくご指導のほどを——」鄭重に頭を下げ、座敷の敷居際まで見送った。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
もとより、再建の道は多岐多難でありますが、御巣鷹山で亡くなられた犠牲者の方々の御霊を心からお弔いし、ご遺族の方々にお詫びするために、身命を賭し(しんめいをとし)て、安全運航を成し遂げねばなりません。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
戦時中の社長であった方も『軍民殉国』のスローガンを掲げ、戦局が厳しくなると、他社に先んじて、軍需工場への転用に応じられましたね、国見さん、その伝統を継ぎ、あなたもまことにご苦労ではありますが、ここは一つ、お国のために、重責を引き受けて戴きたい、総理は、三顧の礼(さんこのれい)を以て迎えると、申しておられます。
山崎豊子『沈まぬ太陽』