2023年9月30日土曜日

生馬の目を抜く

生馬の目を抜く(いきうまのめをぬく)アメリカのテレビ局で、まともな仕事を与えられるはずもなく、どうせ便利屋扱いされているだけに違いなかった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月29日金曜日

義憤

会長批判の中、和光監査役は義憤(ぎふん)に耐えないと、真実を私に教えにきてくれた。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月28日木曜日

しじま

森閑とした夜のしじま(しじま)の中で、恩地は、今朝方、会長室で、自制している国見の姿を瞼に浮かべた。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月26日火曜日

意気軒昂

唾を飛ばし、意気軒昂(いきけんこう)だった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月24日日曜日

人後に落ちない

"肥後もっこす"の豪放な面はあるが、官僚らしい用心深さにおいては人後におちない(じんごにおちない)石黒が、そこまであの女に入れ込んでいるとは、いよいよ意外であった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月23日土曜日

色めき立つ

後発の新日本空輸にとって、国際線進出は三十年来の悲願ですから、必死になるのは当然ですが、国民航空は既に、世界各国へ路線を持っているのだから、そんなに色めきたつ(いろめきたつ)ことはないじゃありませんか。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月22日金曜日

夜討ち朝がけ

何しろ、新日本空輸は国民航空に追いつき、追い越せが露骨で、来期は、ヨーロッパ進出に執念を燃やし、夜討ち朝がけ(ようちあさがけ)の攻勢をかけていると聞いております、それだけに当社としては、何としても石黒課長のお力にお縋りしたいのでございます。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月21日木曜日

遊蕩三昧

不正な金で遊蕩三昧(ゆうとうざんまい)の社員もいれば、安全の原点は御巣鷹山だと、会社のポストをなげうって遺骨を拾い、墓標の手入れに明け暮れる社員もいる。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月20日水曜日

無間地獄

子供の遺していった物が眼につき、声を上げて泣いたこともある。五人で囲んでいた食卓に、独り坐ることは、まさに無間地獄(むけんじごく)であった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月19日火曜日

由々しい

いつも云っているように、航空会社で最も大切なものは飛行機です、この実に単純明快なことが、国民航空では理解されていない、特に整備士に至っては、二十四時間三交替制で油にまみれながら働いているにもかかわらず、軽んじられる風潮があるのは、由々しき(ゆゆしき)ことです、これからの国民航空は整備が中心となり、パイロットやスチュワーデスがいて、彼らを囲むように営業や管理部門があるべきです、その意味で、『機付き整備士制度』の導入は早期に実現させねばならないと考えます。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月18日月曜日

金輪際

私は古いしきたりで育った男ですから、世間の価値観が物差しになってます、そやから国民航空が五百二十名もの犠牲者を出して以来、金輪際(こんりんざい)、あの会社の飛行機には乗らんと、通してきましたけど、恩地さんが再建に参画されると聞いて、今日は国民航空で羽田までちゃんと、飛んできましたのや。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月17日日曜日

おしもおされぬ

そら、恩地さんは東都大学法学部出ですよって、それを当然と思うてはるでしょうが、総理は別にして、関西紡績の国見会長云うたら、財界のおしもおされぬ(押しも押されぬ)大御所です、そのお方のいわば補佐官ちゅうのは、私らにとったら、えらいことです。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月16日土曜日

不撓不屈

「もうご一緒出来ないかと思うと、残念です、二十一年にわたって貫かれた藤井さんの不撓不屈(ふとうふくつ)の精神を、私たちも受け継いで参ります。」女性パーサーが、かすかに眼を潤ませながらも、しっかりした口調で云った。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月15日金曜日

囂しい

庭では、午後の暑い照り返しの中、蝉しぐれが囂しい(かまびすしい)。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月14日木曜日

弄する

三成は、自由党の航空対策特別委員会の青山代議士のもとへ裏献金を届け、権謀術数を弄し(ろうし)て帰って来たばかりであったから、ぎくりとしながらも営業畑で鍛え上げたしたたかさで...

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月13日水曜日

高邁

さすがに一国の総理らしい高邁(こうまい)なお言葉ですね。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月12日火曜日

権謀術数

王道とは、中国の夏、殷、周三代の賢王が行った公明正大、無私無偏の道を云い、国を治めるのに権力、陰謀などの覇道によらず、徳を以てせよということです、出典は中国最古の文献『書経』といわれています、総理は、会社の経営、つまり、国民航空の再建も、権謀術数(けんぼうじゅっすう)に依らず、公明正大に王道を以て成し遂げられたしという意を籠めておられるのでしょう。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月11日月曜日

煙草銭

「ところで三百万円、手元にあるかい、今日、要るんだが、あいにく持合せがなくてね」まるで、煙草銭(たばこせん)のたて替えのごとくに聞いた。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月10日日曜日

燦然

三成の部屋には、本といえば、各企業の分厚い社史、絵画といえば、額の方が高価そうなありきたりの富士山の絵しかなく、目を惹くのは、サイドボードにずらりと並んだゴルフコンペの優勝カップであった。毎日、女性秘書に磨かせているという噂通り、燦然(さんぜん)と輝いている。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月9日土曜日

右顧左眄

マスコミが何を書こうが、右顧左眄(うこさべん)しないことですよ、私など、年中、叩かれているが、己れの信じるところに向って邁進しています。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月8日金曜日

顎足付き

辣腕記者であったから、当初は東京近郊でのゴルフコンペや、新橋の料亭『千姫』での飲食接待だったが、次第にエスカレートし、札幌でのゴルフに招待した時は、顎足付き(あごあしつき)だったのに、ゴルフ道具さえ持って来なかった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月7日木曜日

昵懇

笹本は、運輸省の記者クラブのキャップをつとめたこともある四十過ぎのベテラン記者で、国民航空の広報部とは、とりわけ昵懇(じっこん)の間柄であった。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月6日水曜日

位人臣を極める

何をおっしゃいます、石黒課長は、官僚として、位人臣を極めら(くらいじんしんをきわめら)れる方だと存じております。

山崎豊子『沈まぬ太陽

2023年9月2日土曜日

よしなに

いいえ、あなたがゴルフで遠出していて、連絡が取れないと云うと、奥様からよしなに(よしなに)お取り次ぎ下さいとだけ。

山崎豊子『沈まぬ太陽