2021年12月29日水曜日

天地神明

だからと云って、私がその電信案をコピーして、社進党へ渡すなど、天地神明(てんちしんめい)に誓ってございません。

山崎豊子『運命の人』

2021年12月18日土曜日

佇まい

高床式正殿の緑青の大屋根が真一文字に空間を切り、白壁と茶褐色の柱と梁の三色で統一された正殿は、簡素で荘重な日本の伝統美を凝縮した佇まい(たたずまい)である。

山崎豊子『運命の人』

2021年12月5日日曜日

偉丈夫

やや固い表情だった愛池大臣は、新聞記者たちを意識したのか、俄かに、にこやかな笑顔を作り、偉丈夫(いじょうふ)のロジャード長官と握手しながら、大きなゼスチャーで、別れの言葉を述べた。

山崎豊子『運命の人』

2021年12月4日土曜日

噯にも出さない

ロジャード長官と愛池大臣は会談の三十分遅れなど噯にも出さず(おくびにもださず)、当たり障りのない挨拶を交した。

山崎豊子『運命の人』

2021年11月28日日曜日

静謐

 道一本隔てたその向こうがシャンゼリゼ大通りである事など感じさせない静謐(せいひつ)さである。

山崎豊子『運命の人』

2021年11月21日日曜日

死屍累々

 今、振り返ってみると、官房長時代の小平を取り巻いていた各社の記者の中、エースとして生き残ったのは二人位で、あとは死屍累々(ししるいるい)だった。

山崎豊子『運命の人』

2021年11月13日土曜日

瀟洒

大手町の毎朝新聞社は"三大紙"と云われる全国紙の一翼を占め、移転してまだ五年目の十五階建ての建物は、ガラス面の多い瀟洒(しょうしゃ)な設計である。

山崎豊子『運命の人』

2021年11月11日木曜日

相好を崩す

弓成は相好を崩し(そうごうをくずし)、スタンドの豆電球にほんのりうかび上がっている子供たちの顔に見入った。

山崎豊子『運命の人』

2021年11月7日日曜日

如才無い

 如才なく(じょさいなく)云い、手をさしのべ、握手すると、事務官らがドアを開にしているエレベーターに乗り込んだ。

山崎豊子『運命の人』

2021年10月24日日曜日

援用

学者や研究者が学術論文を執筆したり、ビジネスマンが部内会議や取引先で企画のプレゼンテーションをする際にも、自説の説得力を高めるためのツールとして統計データの援用は不可欠と言えるだろう。

門倉貴史『本当は嘘つきな統計数字』

2021年10月17日日曜日

襟度

閑叟は幼少のころ磯浜に育てられているとき、世に大名ほどえらいものはないと教えられ、大名としての襟度(きんど)をさまざまな機会におしえられた。

司馬遼太郎『肥前の妖怪』

2021年10月3日日曜日

揺籃

湯川、朝永両博士の活躍は、日本の中では素粒子物理学の揺籃(ようらん)の時代を築き上げたものである。

中村誠太郎『湯川秀樹と朝永振一郎』

2021年9月30日木曜日

洒脱

久子の洒脱(しゃだつ)なたとえで、ようやく溜息の色が見えた。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月29日水曜日

たまさか

 それは比類なきヒーローである元帥が、たまさか人間に戻る一瞬であった。

浅田次郎『日輪の遺産』

2021年9月27日月曜日

奸物

あの奸物(かんぶつ)を怖れるのではない。

浅田次郎『日輪の遺産』

2021年9月26日日曜日

花嫁御寮

まるでさわが結婚式を上げる花嫁御寮のような動揺のしかただった。

新田次郎『孤高の人』

2021年9月25日土曜日

いまわのきわ

 老人がいまわのきわに投げ出した手帳である。

浅田次郎『日輪の遺産』

2021年9月23日木曜日

掉尾

 一年の掉尾(ちょうび、角川文庫単行本による振り仮名はとうび) を飾る有馬記念競争(グランプリ・レース)は中山競馬場で行われる。

浅田次郎『日輪の遺産』

2021年9月20日月曜日

無音

二年間の無音(ぶいん)などまるで意に介さず、安藤は微笑で片岡を迎え、思いもよらぬ凶報にも心を動(ゆる)がさなかった。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月18日土曜日

瞠目

  事務所に入るなり、誰もがまず紙包みの厚さに瞠目(どうもく)した。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月8日水曜日

天保銭

 勘弁してくれ、あの参謀殿はそんじょそこいらの天保銭(てんぽうせん)とはわけが違う。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月6日月曜日

斟酌

 あの郵便局長の言葉を、なぜ深く斟酌(しんしゃく)しなかったのだろうか。

浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月3日金曜日

居丈高

本堂の板敷にあぐらをかき、浅井マキ子が対(むか)いにかしこまるのを待って、首席訓導は居丈高(いたけだか)に言った。
浅田次郎『終わらざる夏』

2021年9月1日水曜日

ためつすがめつ

 マッカーサーは絨毯の紋様や壁のレリーフや、照明器具の細工やステンドグラスにまで巧みに図案化された不死鳥の意匠を、ためつすがめつ見つめていた。

-- 浅田次郎『日輪の遺産』

2021年7月6日火曜日

骨惜しみ

自分が骨惜しみをすれば子供らも手を抜く。

 -- 浅田次郎『終わらざる夏』


2021年7月2日金曜日

まなじりを決す

 小山のひざ前に正座をし、佐野はまなじりを決して言った。

-- 浅田次郎『終わらざる夏』

2021年6月1日火曜日

うそぶく

 日本に商いをしに来ているんだぜ、あっちが、日本の言葉を話すべきだと、元吉はうそぶいた

-- 梶よう子『お茶壺道中』

2021年3月12日金曜日

百聞は一見にしかず

 「ひゃくぶんはいっけんにしかず」

綺麗な図を作るソフトを紹介するスライドで見ました。

2021年1月20日水曜日

無聊

加藤文太郎は無聊(ぶりょう)の毎日を過ごしていた。

-- 新田次郎『孤高の人』