2025年5月24日土曜日

面従腹背

面従腹背(めんじゅうふくはい)という言葉が侘しく脳裏をかすめ、辞表という刃で一人、自分に退陣を迫った壹岐の方が、まだしも血が通っているように思われた。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年5月22日木曜日

老醜

大門に退陣を勧めることは、棉花相場で目を掩うばかりの老醜(ろうしゅう)をさらけ出した時から心に決めていたことであったが、現役の社長に退陣を求めることは理屈を超えて至難の業であり、容易に成し得ることではなかった。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年5月21日水曜日

千両役者

千両役者(せんりょうやくしゃ)のように、思い入れたっぷりに話した。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年5月20日火曜日

衒い

"ユナイテッド・モーターズの利益はアメリカの利益なり"と何の(てらい)もなく豪語する巨大企業を一発で仕留めるためには、この四十五階からの眺めは、確かにファイトが湧きますからね。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年5月19日月曜日

三顧の礼

大門社長に三顧の礼(さんこのれい)をもって迎えられ、繊維出身の近畿商事を石油開発まで手がける名実ともに業界第三位の綜合商社に飛躍させた壹岐副社長は、伊原にとってある意味では大門社長以上の雲上人であった。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年5月15日木曜日

股肱

それもわし一人だけの判断では無うて、壹岐君も堂本君も、君の股肱(ここう)の臣の角田まで、君の病気を懸念し、壹岐君に至っては、いつ心臓発作が起るかも解らない人を使うのは残酷です、あたら有為の人の生涯をへし折るようなものですとまで云うたからな。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年5月13日火曜日

ありてい

事実は、兵頭と話し合ったように、万一の場合は、廃坑も予想される暗い先行であったが、大門にありてい(ありてい)に云えば、愚痴られるのが落ちであった。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年5月12日月曜日

無節操

マスコミの無節操(むせっそう)さに呆れながらも、里井は始終、オリオン・オイルと組んで応札することに批判的だっただけに、全社沸きたつ喜びから取り残されたような侘しさを覚え、二日前の深夜、テヘランから一番札を取ったという第一報が入った時、壹岐をはじめ主だった役員は全員、大門が宿舎にしているホテルオークラへ招集されたにもかかわらず、副社長である自分には何の報せもなかったことが、屈辱的であった。

山崎豊子『不毛地帯』

2025年5月4日日曜日

嘱目

それにしても、君は昔から泰然として人を威圧する得な性分を備えている男だな、壹岐君が嘱目(しょくもく)する気持が解るよ。

山崎豊子『不毛地帯』