そのためには、百鬼夜行(ひゃっきやぎょう)の族議員にも、運輸大臣にも悟られず、極秘裡に総理の"影の参謀"と云われる男を介して、一挙にことを決めてしまうことであった。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
政局が混沌とする中で、巧みにキャスティングボードを握り、田沼派と妥協することによって、多くの政治家の怨嗟(えんさ)と羨望を浴びながら、総理の座に就くことが出来たのだった。
総理執務室は、もの音一つせず、森閑(しんかん)としている。
だが、何としても、年内には国民航空の新体制をスタートさせなければ、首相としての鼎の軽重を問わ(かなえのけいちょうをとわ)れかねない、ここは急いで戴きたい。
自己を克明に再現するような口述に、場内は咳(しわぶき)一つなく、静まりかえった。
対応に出て来たのは、スーパーバイザーのマッカリーで、如才なく慇懃(いんぎん)であったが、すべて事務的にことを運んだ。
学者には珍しい洒脱(しゃだつ)な味のある武矢の家には、何事も秘密主義の事故調では聞けない解説や実験結果を聞きに、しばしば記者たちが訪れる。