側にいる従兄も泣き、周りの人たちも、粛然(しゅくぜん)としてたち尽した。
山崎豊子『沈まぬ太陽』
津慶の眼から滂沱(ぼうだ)と涙があふれ、なおも号泣し続けた。
看護婦詰所と隣接する病室の前には、警察官がものものしく警備をしていたが、誰何(すいか)されることなく、病室へ潜り込むことが出来た。
入院先の院長に面会を頼み込んだが、無理ですと、言下(げんか)に拒絶されたのだった。
この一二三便には、長男夫妻と、一粒種(ひとつぶだね)の孫が乗っている。
背の低さを隠すために、いつもヒールの高い靴を履いて、国会内を走り廻るいやな相手であったが、運輸委員会で、些細なことを大袈裟な問題にして、小賢しい(こざかしい)質問をされることを思えば、ご機嫌を取るくらい、わけはない。
だが、恩地だけは瞬きもせず、堂本の一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)に眼を凝らしていた。