2025年7月31日木曜日

しばたたく

「ひどい風ですな。桜の蕾がほころぶ前で幸いでした」玄白が、土埃に眼をしばたたき(瞬き)ながら言った。

吉村昭『冬の鷹』

2025年7月30日水曜日

ひけらかす

良沢は、源内が知識をひけらかせ(ひけらかせ)て世間を驚かせることのみに専念しているように思えた。

吉村昭『冬の鷹』

2025年7月28日月曜日

世人

彼は、オランダ語の修得がきわめて困難であることを知ると同時に、世人(せじん)の手をつけぬこの分野に足をふみ入れてみたいという野心をいだいた。

吉村昭『雪の花』

2025年7月22日火曜日

隆昌

了玄は、長崎を中心とした蘭方の隆昌(りゅうしょう)について話し出した。そのなかには、シーボルトという医者の名も出た。

吉村昭『雪の花』

2025年7月21日月曜日

身じろぎ

その道を見下ろす川の土手の上に、しばしば姿をみせる二十七、八歳の男がいた。男は身じろぎ(みじろぎ)もせず立っていた。痩せた長身の男で、彫りのふかい日焼けした顔には鋭い眼が光っていた。

吉村昭『雪の花』

2025年7月20日日曜日

繰り言

もっとも母が今も生きていて、かたわらでしきりに老いの繰言(くりごと)をきかせていたら、息子はそれをわずらわしがったり、時には親を邪魔者扱いするにちがいない。

李恢成『砧をうつ女』

2025年7月18日金曜日

あずかり知る

かの女達はわが家に舞いもどると、あれこれ気ままな噂をするが、その辺は子供のあずかり知らぬ(あずかりしらぬ)所だ。

李恢成『砧をうつ女』

2025年7月6日日曜日

息巻く

相方には恋人ができて恵比寿で同棲を始め、結婚するのだと息巻い(いきまい)ていた。

又吉直樹『火花』

2025年7月1日火曜日

有象無象

その光景は華やかさとは無縁の有象無象(うぞうむぞう)が、泥濘に頭まで浸かる奇怪な絵図のようだった。

又吉直樹『火花』